厚生労働省が出している全国の労働災害の発生状況の令和6年度分が出ました。建設業の死亡災害のうち、
要因別では相変わらず墜落・転落災害が1位です。ただ、2位以下を見たときに注目すべきは、
これまで多かった挟まれ・巻き込まれではなく崩壊・倒壊が増えて2位に躍り出たことです。
それぞれの事故に様々な要因があるのを承知の上で申し上げると、崩壊・倒壊の事故が増えたのは
作業手順や施工方法の検討不足があるように思います。崩壊や倒壊が発生しないかの検討(土質等)、
万が一それらが起こった時、作業員が巻き込まれない位置で作業ができるかどうかの検討、崩壊・倒壊
させないための資器材の選定等、事前の準備・計画段階をきちんと行っていれば、崩壊・倒壊は本来
起こりにくい種別の災害なのです。

それはなぜかというと、「動いていないものを動かないように留めておけば崩壊・倒壊は起こらない」
からです。
例えば、挟まれ・巻き込まれであれば動いているものからどう身を守るかが焦点となりますが、
物体が動いている以上、予期せぬ動きや暴走等、予測が難しい事柄を織り込まねばならず、予防が
困難な部分がどうしても出てきます。
一方で、崩壊や倒壊は触らなければそこに留まっているので施工前に十分に調査・検討ができ、
検討を基にした施工計画を作り、立ち入り禁止等の安全環境整備を行えば基本的には何も起こら
ないし、起こったとしても検討した内容の範疇に収めることができるので、予測しなかった事態
という事が発生しにくいのです。
その、本来発生しにくい災害が死亡者数2位となったという事は、非常事態なのです。
検討するための知識を持った人の不足、安全な施工計画を立案するための経験を持った人材の不足、
現場において安全な計画通りに施工できる技術・意識を持った作業員の不足等、昨今の建設業界の
人材不足にリンクする深刻な状況を浮き彫りにしていると言えます。
われわれの行っている発注者支援の業務の中でも、安全検討会等に参加する機会があります。
日々の業務が忙しく、どうしても流れ作業的になってしまう部分もあると思いますが、
我々が関与することで気付けること、防げる事故はきっとあるはずです。
その他の業務も含めて、現場での死亡災害を1件でも減らすことを意識して業務に当たることが
とても大切なのではないかと思います。